早いもので、11/23(日)に開催された「文学フリマ東京41」から丸一週間が経過した。僕は『労働文集 考働』とすずひらさんの書籍を販売すべく、すずひらさんのブースに立たせてもらった。
創作の熱気と喜びに満ちた、素晴らしい体験をレポートする。
この日も早朝移動
2週間前に東京へ行った時と同様に、早朝の新幹線で移動した。

3列シートの窓側A席。差し込む朝日に目を細めながら、流れる景色をボーっと眺める。三連休中日の早朝ながら車内は混んでいて、僕の隣のB席にも人が座っていた。みんな、どこへ行くんだろう。

会社員時代はよく出張があって、月1〜2回くらいのペースで東京へ行った。これから戦場へ赴く心持ちで、いつも妙な緊張感やプレッシャーを抱えていたし、移動中にメールや電話連絡が溜まりまくるストレスもあった。新幹線に乗っている2時間半でいかに効率よくタスクを捌けるか、ということがテーマになっていて、車窓を眺める余裕なんて全然なかった。
しかし、今は違う。目的地での楽しい出来事を想像しながら、ワクワクした気持ちで新幹線に乗ることができる。それだけで、十分幸せなことだ。
ゆりかもめに乗り換え
品川駅で新幹線を降り、新橋へ移動して「ゆりかもめ」に乗り換えた。よく考えてみれば、初めて乗ったかもしれない。

ところで、「ゆりかもめ」と聞いて、その姿を瞬時に想像できるだろうか?僕はあまりピンと来なかった。なんとなくカモメの一種で、白い鳥だろうというくらいは想像はできるものの、具体的な像は浮かんでこない。ChatGPTに生成してもらったら、こんな画像が出てきた。

あ、割と想像通りだったわ(笑)
一説によれば、白い羽毛が花のユリのようであることからユリカモメと命名され、海に群がる姿がお花畑のように見えるらしい。なにそのかわいいエピソード。
平安時代の歌物語『伊勢物語』の中で、隅田川にいたユリカモメを「都鳥」と読んだことから、「東京都の鳥」に指定されたのだとか。
なるほど、東京の海辺を走る路線だから「ゆりかもめ」なんだな。

東京ビッグサイトへ
ゆりかもめに揺られること約20分。会場の東京ビッグサイトに到着。
こちらも人生初の訪問となった。
周囲には文学フリマに出店するであろう大荷物をキャリアに乗せて歩く人たちがチラホラ見られた。


時刻は10:20くらい。入り口で待ってくれていたすずひらさんと合流し、出店者用のゲートを通過して会場へと移動した。
ビッグサイトはさすがに広く、ブースまで到達するのにも時間がかかった。9月に参加した「文学フリマ大阪13」の会場の1.5倍くらいありそうな巨大な空間。さらに、その巨大空間が2フロアあった。

入場早々スケールのデカさに度肝を抜かれたが、気を取り直してブースの準備を始めていく。基本的な設計や備品などは全てすずひらさんが準備してくれていたので、設置もかなりスムーズだった。ありがとうございます。
今回は、隣にゆるふわ無職さん率いる「ニートマガジン」ブース、さらにその隣に久保さん率いる「まとも書房」ブースが並んでおり、テーマ的に一体感のあるエリアが発生していた(通称:魔の無職地帯)。続々と知り合いが会場入りしてきて、それだけで心強かった。
お客さんとのコミュニケーションの取りやすさ、入り口からの動線を鑑みたレイアウトなどを調整し、無事にブースは完成した。

あとはスタートを待つばかり。お祭りが始まる前の、なんとも言えないワクワク感が会場に漂っていた。
そうそう。売り切れてしまう前にと思い、この日に発売されたばかりの「ニートマガジンvol.4」も購入させていただいた。その後、見事に完売したそうなので、買っておいて本当に良かった。

まだ読んでいる最中だけど、面白いエピソードや思想が盛りだくさん。間違いなく神回である。
ちなみに、僕が今回の文フリで買った本はこれ一冊。本当はもっと物色したかったものの、その後も2泊ほど東京に滞在予定だったので、あまり荷物を増やしてはならないというハードルが高くなりすぎた結果がコレである。
文学フリマがはじまる
12:00。スタッフさんのアナウンスと共に文学フリマ東京41が開場となった。誰ともなく、会場に拍手が沸き起こる。
しばらくすると、考働の執筆メンバーである小林エマさんとあまねこさんが時間差でブースへ来てくれた。二週間ぶりの再会。ラジオ収録で顔を合わせていることも相まって、最近は関西の友人よりも頻繁に会っている気がする(笑)
二人とも、目当てのブースを見て回りたいということで旅立っていった。誰がどう見てもウキウキしていた。小林さんもあまねこさんも、「自分で本を書いて文フリに出品したい」という想いを持っていて、本当に文学や本が好きなのだなと感じる。無事に形になりますように。創作を共にした考働メイトとして、心から応援したい。
予想外の反響
時間の経過と共に、会場はものすごい人で溢れかえっていった。

イベント開始前、すずひらさんはこんなことを言っていた。
「考働は60冊持ってきたけど、そのうち30〜40冊売れれば良い方でしょう。東京は規模が大きすぎて、スルーされる確率が高いです。」
これは過去に文フリ東京に参加したことがあるすずひらさんの経験則によるもので、僕も「なるほど、そうなのか」と受け止めて、それをひとつの目標値にしていた。
しかし、結果的には予想に反して売れまくった。
すずひらブースでは計4種の本を販売していたのだけど、そのうち『「働きたくない」わけではない』と『労働文集 考働』の2種が完売。他の2種についても過去最高の販売数となり、合計115冊が売れる大盛況となった。

うまくいった要因は様々あれど、何より4人で力を合わせて取り組んだ結果だと思うと、めちゃくちゃ嬉しかったし達成感もあった。前回の大阪の時と同じような充足感を味わうことができた。
すずひらさんを介して、ほくさんやむらっしーさんともお話しさせていただく機会もいただいた。また一つ世界が広がって嬉しかった。
作ったものを人に届ける楽しさ
考働ラジオでも何度か話したのだけど、やはり自分たちでゼロから立ち上げた創作というのは特別な価値があるし、それを届ける喜びもひとしおだと思う。今回の文フリ東京にて、改めて実感した。

創作している最中はもちろんのこと、それを直接お客さんとコミュニケーションをして届けられる瞬間は非常に高揚感がある。これは、会社員では体験できなかったことの一つだ。
会社員時代との違い
僕は会社員時代からものづくりをしていたし、作ったものの多くはそれなりのスケール感で世の中に送り出されていた。だけど、それに対する手応えを感じられる瞬間はほぼなかったように思う。
何度か、自分の名前が業界関連誌に載ったこともあるし、Yahoo!知恵袋やSNSで話題になる仕事に携わらせていただいた経験もあったのだけど、それに対して「自分が成し遂げた」という実感はあまり感じたことがない。どう言えばいいか難しいけど、「どこか遠い世界の話」という感じ。
一応フォローしておくと、一緒に仕事をさせてもらったクライアントや代理店の方、クリエイティブを支えてくれた外部パートナーと喜びを分かち合うことはできた。しかし、大切な一方である「受け取り手」が存在しない場所で、掴みどころのよくわからない達成感をしがんでいたのだなと、今になってみれば気付くことができる。
こう言ってしまうとなんだが、やはりどこまでいっても「他人様のための創作」の域を出なかったのかもしれない。前提として、誠心誠意、丹精を込めて作ってはいた。それでも、魂までは込めることができなかったのかもしれない。
誰かに届くその瞬間まで、自分の創作の面倒を見てやれる環境の方が僕にとっては幸せなのだと思った。
新橋で打ち上げ
文フリ終了後は、新橋まで移動して打ち上げをした。
久保さんのサポートに来ていたまちぇっとさん、文フリのラストまで残ってくださったほくさんも一緒に行くことになった。
一次会:新時代
会場は安定の「新時代」。すずひらさんといると高確率で新時代に行くことになる。でも、安くて旨いので何の文句もない。むしろ、毎回お店選びに悩む手間が削減されてありがたいくらい。すずひらさんが飽きるまでは付いていくことにする。

このあと、とうふやさんも合流し、計7名となる。いつも楽しく賑やかな考働メンバーの打ち上げ。今回も御多分に漏れず盛大に盛り上がった。
二次会:ミライザカ
このあとは、別で飲んでいたチーム(久保さん、しょうごさん、ゆるふわ無職さん、コソウさん、ヤキソバライターさん、下宿人さん)と合流し二次会へ。総勢13名の大群となった。さすがに入れるお店がないかもと焦ったが、さすがはサラリーマンの聖地・新橋。あっけなく1軒目に訪ねたミライザカへ収容される運びとなる。

ここでは、ニーマガメンバーの一人である下宿人さんともお話しすることができた。下宿人さんは、ニーマガvol.1の時から寄稿されているスタメンで、なんとも情緒的で不思議で哀愁に満ちた文章を書かれている。一方的に、すごく魅力を感じていたのでお会いできて光栄だった。
その後は席替えもしながら色々な方とお話をした。ヤキライさんとしょうごさんはあまり喋れなかった記憶なので、またの機会にお話しさせてください!
三次会:磯丸水産
その後、終電が迫ったメンバーは解散する運びとなったが、すずひらさんと僕は新橋に宿をとってあったので「もう一軒くらい行ってシッポリやりますか」的な流れになっていた。
なんて話をしていると、なんとそこにとうふやさんもジョイン。「明日は休みなので、ぜんぜん行けます!!チャキチャキ!」だそうだ。さすがは元気印。さらに、下宿人さんも「最悪、タクシーで帰れる距離なので」ということで参戦。
というわけで、4人で近くの磯丸水産へ。

なぜかイカを2つ注文してしまい、大量のイカリングを食べる羽目になった。美味しかったので結果オーライ。


いつも通り、なんの話をしたか1ミリも思い出せないけど、楽しかった記憶だけは残っている。ありがとうございました。
その後、すずひらさんと僕は体力の限界を迎えたため撤収の流れとなったが、下宿人さんととうふやさんは2人で四次会を開催し、始発まで飲んでいたらしい。新橋のサラリーマンもびっくりである。ホテルに着いてからは、倒れるように眠りについた。
そんなこんなで、僕の文フリ東京は幕を閉じた。こうして、創作したものを直接人に届ける体験や、それを通じて色々な人との繋がりが生まれていくことにとてつもない喜びを感じる。それを改めて実感できた1日だった。
おわり


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